6月4日〜10日は「歯と口の健康週間」
人生何歳になってもおいしいものをおいしく食べ、身も心も元気に保ちたいものです。そのためには健康な歯・口およびその周囲の機能を保ち続けることが必要不可欠となります。日本歯科医師会は、生涯を通して自分の歯でよく噛んで味わえる食生活を目指す「8020運動」を推進していましたが近年では2人に1人が達成しています。さらに多くの方が達成できるよう越谷市歯科医師会は皆さんの健康を歯・口から応援します!
越谷市歯科医師会 TEL:048-940-1855
歯周病と認知症
歯周病と認知症の関連性
認知症とは脳の萎縮や脳血管障害などにより認知機能が低下し、物忘れなどの症状によって日常生活に支障を来す状態と定義されています。認知症は高齢化とともに増加し、2012年は65歳以上の高齢者の7人に1人といわれていましたが、2025年には5人に1人になると見込まれています。歯周病は糖尿病や高血圧などの全身疾患に影響を及ぼすことが知られていますが、認知機能との関連も注目されています。
歯周病は歯を失う最も大きな原因ですが、認知症患者の口腔内は、健常者と比べ、むし歯・歯周病の有病率が高く、多くの歯を喪失している、義歯が合っていないもしくは不潔なままで使用しているなど、認知機能低下により口腔内の清掃状態が不良であることが見受けられます。
認知症の発症リスクは、残っている歯が少ないほど高くなるといわれており、歯がほとんどないのに義歯を使用していない人は、歯が20本以上ある人と比べ1.85倍認知症のリスクが高くなるといわれています。
一方で、歯がほとんどない人が義歯を使用している人は1.09倍といわれており、歯を失っても義歯の使用でそしゃく機能を補うことで、よく噛んで味わえるようになり脳への刺激が増え、認知症のリスクを低下させる可能性があります。
歯周病が全身に及ぼす影響について
認知症やそれに似た症状を示す疾患や病態はさまざまですが、アルツハイマー病が最も高い割合を占めています。脳梗塞や脳出血などの脳血管の病気による脳血管性認知症とは違い、アルツハイマー病は脳の神経細胞が通常よりも早く減ってしまうことで認知機能が低下する神経変性疾患に分類されます。
アルツハイマー病は脳の神経細胞の減少につれ、徐々に物忘れをしたり、時間や場所がわからなくなる中核症状が現れます。これに伴い、暴言や暴行、不安、気分が落ち込むなどの心理症状なども見られ、やがて寝たきりの状態になります。患者の約半数が発症から2年〜8年で寝たきりとなり、発症から死亡までの平均期間は約8年〜10年といわれております。
諸説ある原因中で最も有力なのは脳にアミロイドβや、タウたんぱく質がたまり、神経細胞が減少することで発症するという説です。
このたんぱく質の生成は歯周病菌とそれによる慢性的な炎症状態が続くことで産生される炎症物質と関連があり、脳において神経細胞を低下させる危険因子となります。
これらが歯肉から血液中に入り全身をめぐることで、アルツハイマー病だけでなく脳梗塞、誤嚥性肺炎、心筋梗塞、動脈硬化、糖尿病、高血圧、早産、肝炎などの発症率にも影響します。
今回は認知症に注目しましたが、歯周病により歯を喪失したままにする、歯周病菌が多い状態は直接的または間接的に全身疾患に影響するといえます。
定期的な検診を
定期的な検診とメンテナンスで生涯にわたり歯周病、口腔内の環境を整えていただき、おいしく食べて元気で過ごしましょう!